美穂-480
「えっ、見られているのは困るわ、我慢しなくてわ~」
[だめ。もう、遅いわよ~]
幸子は左手で、美穂の左腕を掴みながら、右手は美穂の腰に回したが、帯が邪魔でとどかなかった。
ならばと、お尻の上の帯の下に右手の指先を差し込み、支えて歩き出した。
それは、美穂の股縄を締め上げて歩く事になるが、美穂は歩く事が難しくなってきた。
「幸子さん、許して~もう外では、逝きたくないわ~」
[ダメよ。運転手さんは厭らしい視線で美穂をジロジロ見ているから、喜ばせてあげなくちゃ~。]
「さ、幸子さん‥」
美穂はすんなり諦めた。田嶋さんは、幸子さんに"S気質"がある事を素早く見抜き、"和室へ案内しろ"と言った事を、今、やっと納得していた。
幸子は、タクシー運転手に美穂の狼狽える姿を見せるために、わざと車椅子のスロープへと遠回りして、股縄を動かし、美穂を追い立てた。