美穂-334
(無一文…アパートが焼けてしまった事が気持ちと思考力を塞いでいた。この後、美穂に多額な保険金が手に入るとは思ってもいなかった。
生命保険が個人で3つと会社の団体保険・さらに退職金・アパートの動産保険…
総額で2億に近い保険金などになるとは思ってもいなかった…)
喪服の中は裸体に麻縄だが、違和感を感じてはいない美穂…こんなに馴染むとは美穂自身も驚いている様だ…
『明日の家族葬だけは、ちゃんとした身なりで出なさいっ』
コインロッカーに鞄を預け、身軽な田嶋は立ち竦んで動かぬ美穂の腰に手を添えて、麻縄を動かした。
「いつまでも迷っていて、ごめんなさい。よくよく考えたら、所持金が…無くて…」
(本当は田嶋さんが股縄を動かすから、縄の刺激に気が行き、思考が止まっていた…とは、恥ずかしくて言えなかった…)