心は誠-4
部屋に入り、しばらくは呑みながら身の上話をし、よくしゃべっていたのが嘘の様に、今は当たり前だが…無言である。
背中に回してある両腕の手首に手を掛け、ゆっくりと上に引き上げて彼女の躰に異変が出ないか確かめた。
「痛い。駄目です。左肩が痛いです。」
『怪我したのか…』
「高校生の時に、バレーボールで怪我をしてから、肩の付け根が堅いしこりができて、左右の上がる限界が違ってます。」
『わかった。左肩には気をつけて縛るから、心配はいらないぞ。』
「はい。ありがとうございます。」
足を動かさずに、上半身の半身をひねり、頭を下げながら、礼を言いだした。
(気持ちが、素直だなと少し感心し、親しみが湧いてきた…)
『縛るぞ。力を抜いていろ…』
「はい。」
縄の2つ折りにした真ん中の縄尻を指先で持ち、2回り潜らせ腕に隙間をあけるために2重の縄ごと長い縄と結びあわせた。
長い縄を背中から右腕側から前に回し、左腕側から背中の縄を潜らせる。