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茉莉-55

ここに着くまで、さっき入れられた玉子の様な大きさのローターが2つ肉壺の中で動かされ、悶えさせられていたので、どれだけの時間を、走ったか見当がまったくついていない。

車から降り、エレベーターに乗るまで目隠しをされたままの茉莉は、隣国の「拉致」を思い出して不安がつのるばかりであった。

唯一、エレベーターの床が絨毯の様な感触や静かさに、立派な造りの建物を想像し不安は少し和らいでいた。

目隠しを取られたのは、窓もない個室に入ってからだ。

部長と小野の他にもう1人男がいて…田嶋と紹介されたこの男が、しばらく茉莉を躾ると告げられた。

『田嶋です。車の中での悶える姿を車を運転しながら、観させて貰いましたよ』

(見えないと言えども、田嶋は気配をまったく気づかせなかった事で、威圧感を感じていた…引き締まった体格に、色黒、五分刈り、サングラス…2人とはまったく違っていた)

「桜井です…」


威圧されて、言葉がつづかない…


『挨拶も、まともにできないとは…田嶋さん、躾るには時間がかかりそうですか…』


『高倉から順調だと聞いてます。心配いらないと思います』


(高倉って誰…知らないわ)


「茉莉が知らないけど茉莉を知っているって事になる…高倉さんて何者…ですか」


話に部長がわって入り、「皆さん食事にしましょう」…10人は座れる中華用の丸テーブルに座り始めたのは、部長・小野が椅子をひとつ開けて座り、茉莉もひとつ開けて小野の横に座る。

高倉は、茉莉のすぐ隣に座り、挟まれる形になっていた…

一瞬不安な気持ちが湧いたが、席を移るほどでもと…思い止まった。

最初に前菜の料理が運ばれてきたが、ミニのチャイナ服に驚かされた。

もうひとりの子は、同色のアイマスクを掛けている。


(誰かに似ている…彼女も茉莉を見ている)


ミニのチャイナ服とアイマスクを見て息苦しくなる…

つづく

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